BroadLine(ブロードライン)

導入事例
株式会社サイバーエージェント

業種:情報通信

コストを抑えながらAWSとの高品質な接続を実現、
将来的な GCP とのマルチクラウド化も視野に

導入効果
AWSとの接続を閉域網経由にすることでデータ転送費用を低減
耐障害性の高いネットワーク構成を実現
将来的な GCP との接続などマルチクラウド化を視野に入れた環境を構築
導入サービス
AWS接続サービス
リレーションEthernet
株式会社サイバーエージェント
設立
1998年3月18日
本部所在地
東京都渋谷区
事業内容
  • メディア事業
  • インターネット広告事業
  • ゲーム事業
  • 投資育成事業
URL
https://www.cyberagent.co.jp/
ロゴ:株式会社サイバーエージェント

メディア事業やインターネット広告事業などを展開する株式会社サイバーエージェント。同社のアドテク本部では、特定のサービスのシステム基盤としてアマゾン ウェブ サービス(以下、AWS)をはじめとするクラウドサービスを利用していた。AWSと接続するにあたり、データ転送量の多い同社ではインターネット回線を経由した従量課金の通信コストや通信遅延などが課題となっていた。その解決策としてAWS Direct Connectを介した接続に着目。同社データセンターからAWS Direct Connectまでの接続回線として採用したのが、TOKAIコミュニケーションズのBroadLine「AWS接続サービス」だ。 Google Cloud Platform™ (以下、 GCP™ )の利用も拡大しつつある同社は、将来的なマルチクラウド化も見据えた高品質なネットワーク環境の構築を実現した。

山本 孔明 氏
株式会社サイバーエージェント
アドテク本部 技術戦略室
Central Infrastructure Agency
インフラエンジニア
写真:山本 孔明 氏

目次

ずっと"我慢"している感覚だったインターネット経由のAWS接続

ブログサービスや音楽配信サービスなど、多岐にわたってインターネット関連ビジネスを展開するサイバーエージェントでは、インターネット広告事業やゲーム事業が順調に推移。現在は動画配信サービス「AbemaTV」に積極的な投資を予定するなど、主力サービスの成長や提供コンテンツの拡大が勢いを増している。

こうした各種コンテンツを運営する同社のビジネスを支えるために必須となるのが、高品質なネットワーク環境だ。サイバーエージェントでは自社サービスの提供基盤としてAWSをはじめとするクラウドサービスを採用しており、主力事業の一つであるインターネット広告事業では、インターネット広告の肝となる仕組みであるRTB(リアルタイム入札)に関わるシステムをクラウドサービスで運用している。AWS上にはこの他にも様々なサービスが稼働しており、現在数十のAmazon VPCが構築されている。

同社のアドテクノロジー分野を統括するアドテク本部では、AWSの利用を開始して以降、インターネット経由(VPN等)や、他部門が提供する閉域網回線に相乗りする形でAWSとの接続を行っていた。特にAWSのストレージサービス「Amazon S3」との通信では、自部門で品質の高い接続環境を保有しておらず、インターネット経由(非VPN)で大容量データを直接やりとりすることとなり、インターネット回線のコストがネックとなっていた。当時の状況について、株式会社サイバーエージェント アドテク本部 技術戦略室の山本孔明氏は、次のように説明する。

「インターネットを経由したAWSとの接続はベストエフォート型の通信で、品質や耐障害性はそれほど高いものではありませんでした。一方、他部門が提供している閉域網回線では、特定用途のトラフィックが帯域を占有し、将来的にも利用帯域の増加が計画されていたため、アドテク本部が重要なトラフィックを流す環境として利用することは特性上難しい状況でした」。

「また、利用するインターネット回線がピークトラフィック課金方式のため、データ転送量の増大に伴い通信コストも膨れ上がります。利用部門側でピーク帯に重ならないようトラフィックを抑えるなどの工夫が求められ、ずっと"我慢"している感覚でした」。

求めたのは低コストでのAWS Direct Connectへの接続

そこで山本氏は2015年、アドテク本部においても、AWSの閉域網接続サービス「AWS Direct Connect」を利用し、同社のデータセンターからAWSへ接続する方法を導入しようと考えた。インターネット経由と比較した場合、通信の品質や耐障害性の向上に加え、データ転送量が多い同社では通信コストの低減も見込めたからだ。

同社のデータセンターとAWSの間で専用の接続回線を用意し、データセンターへの入線には異ルートの光ファイバーで冗長化を図るとともに、AWS Direct Connect側も2系統を利用することで、耐障害性の高い冗長ネットワークの構築を模索した。検討を進める中で、すでに取引のあったTOKAIコミュニケーションズにも相談したという。

「光ファイバーを2系統用意する場合、どうしてもコストが高くなってしまいます。当時はまだ、我々の想定するコスト内で実現できる通信サービスがありませんでした。"我慢"が続く状況でした」。

コスト、柔軟性、将来性からTOKAIコミュニケーションズを選択

転機は2016年春。TOKAIコミュニケーションズからBroadLine「AWS接続サービス」の提案を再度受けた。

TOKAIコミュニケーションズは、かねてよりAWS接続サービスの足回り回線となる広域イーサネットサービス「リレーションEthernet」のネットワーク拡張に取り組んでおり、提携するデータセンターに対して積極的にネットワークを引き込み、収容可能ビルの拡充を推進している。2015年時点では未対応だったサイバーエージェントが利用するデータセンターについても、2016年春に異ルートで構成される光ファイバーを利用して、冗長ネットワークを延伸した。これにより、同社は利用データセンター構内で容易にリレーションEthernet網と接続でき、AWSとの閉域網接続が可能となった。複数拠点を接続でき、拠点追加も容易な広域イーサネットは、将来的なネットワーク拡張やマルチクラウド化に対応しやすいというメリットが得られる。

サイバーエージェントは、別の既存回線事業者のサービスと比較検討した結果、最終的にTOKAIコミュニケーションズの採用を決めた。その理由について、山本氏は次のように説明する。

「TOKAIコミュニケーションズのAWS接続サービスは、すでに我々の利用するデータセンター内まで2系統・異ルートの光ファイバーを伸ばしており、高い耐障害性が担保されているだけでなく、アクセス区間の回線を敷設する手間やコストを最小限に抑えることができました。まずこの点においてTOKAIコミュニケーションズに優位性がありました」。

通信の品質については両社遜色ないものだったが、山本氏は「各回線について、きめ細かな帯域設定の提案をしてくれたことが大きかった」と続ける。TOKAIコミュニケーションズのサービスは、10Mbpsから10Gbpsまで多数の帯域品目が用意されており、利用用途に応じて拠点ごとに柔軟に選択できる。サイバーエージェントでは、データセンター側の回線は10Gbpsまで拡張可能な冗長回線、AWS側の回線は利用部門や事業に応じて1Gbps冗長回線を2系統用意することを想定していた。「我々はコスト効果も踏まえて、一気に10Gbpsの回線を敷きたいわけではなく、それだけの通信容量は担保された上で、利用状況に合わせて増減できる柔軟な利用形態を望んでいました。TOKAIコミュニケーションズの提案は、我々のそうしたニーズを満たしてくれるものでした」。

そしてもう1つ、山本氏が重要な要件と考えたのが、将来的な GCP とのマルチクラウド化が実現可能な拡張性だった。

将来的な GCP とのマルチクラウド化に向けて

サイバーエージェントでは、システム基盤としてAWSだけでなく、 GCP や、データセンター内に構築したプライベートクラウド環境も利用している。そして今後さらに利用が拡大していくと考えられるのが GCP だ。

「利用サービスによって、 GCP の方がコストが安くなるケースがあります。また我々は GCP のデータ解析サービス「BigQuery」やコンテナ基盤「Google Kubernetes Engine」を利用する場面も多く、社内のエンジニアからはその他の機能の利用についても要望を受けることが増えてきました。将来的にリレーションEthernetを利用した GCP との接続が可能になるかどうか、それがコストと並んで重要視した要件の一つでした」。

TOKAIコミュニケーションズは、他社に先駆けて GCP へのIP網経由でのキャリア接続を開始している。2015年の検討時には GCP 自体が未対応だった閉域網接続についても、2017年現在、サービス開始に向けて準備が進められている。

「TOKAIコミュニケーションズのネットワークエンジニアの方に細かい技術的な質問、例えば広域イーサネット網内のルーティングをどうするかなどを聞き、 GCP 側の特性に合わせた明確な回答をもらいました。通信品質や耐障害性はこれまでの取引実績を評価していましたし、技術力や実現性も感じられたことが改めて大きな安心感につながりました。将来的な GCP 接続も含めたマルチクラウド化を見据え、TOKAIコミュニケーションズにお願いすることに決めました」。

同社は2016年6月から約2か月の短期間で新たなネットワークの構築を終え、約1か月の検証の後、9月から本番稼働を開始した。

「利用を開始して1年が経過しましたが、障害もなく安定して利用できています。インターネット経由と比べて通信コストを低減できたことと、利用部門の利便性の向上が導入のメリットです。高速な通信で大容量のデータ転送もストレスなく行うことができ、個別のVPN設定作業や他部門との調整も不要になるなど、AWSとプライベートクラウド内の社内ツールとの連携も容易になりました」。

今後サイバーエージェントでは、 GCP との閉域網接続が可能となり次第、リレーションEthernetから GCP への接続も実現したい考えだ。「社内のクラウド利用は拡大しており、回線の使用帯域も増加傾向にあります。利用状況を確認しながら、適切なタイミングで帯域の拡張を検討していきます。今後もTOKAIコミュニケーションズと相談しながら、最適解を見つけていきたいと思います」と山本氏は期待を込めて締めくくった。

構成図:株式会社サイバーエージェント

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